小売業界に18年間も身を置いてきた私が、これから就職・転職を考えている人や、今まさに小売業界で働いていて悩んでいる人に、たったひとつ伝えたいことがあります。
それは、「もし、少しでも後悔しそうなら、小売業界はやめておけ」ということです。
小売業界にまつわる話として、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
「就職に失敗した」、「労働環境が劣悪だ」、「他の業界に転職しづらい」という、ネガティブな噂の数々を。
残念ながら、それはおおむね事実です。
しかし、私は小売業界のすべてを否定したいわけではありません。
この業界で働くことが苦痛でなければ、それで良いのです。
人には向き不向きがあり、小売業界が向く人も確実に存在します。
ただ、多くの人が「なんとなく」働き始めてから後悔している現実があります。
だからこそ、後悔のない決断をしてほしい。
今回は、私の実体験をベースに、小売業界の「リアルな裏側」を語ります。
この記事が、あなたの「仕事がツライ…」というモヤモヤを吹き飛ばし、自分らしい働き方を見つけるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
Step 1:小売業界の「労働の闇」を直視し、あなたの悩みの根源を知る
まず、なぜ小売業界が「ブラックだ」と言われるのか、その根本的な理由を見ていきましょう。
有名YouTuberサラタメ氏の著書『シン・サラリーマン』によると、ブラック業界には3つの特徴があるそうです。
- 労働集約型
- 競争が激しい
- 個人への接客が必要
小売業界は、この3つの特徴にピタリと当てはまります。
ビジネスモデルが「人間の労働力」を軸としているため、精神的にも肉体的にも疲弊することが確定しています。
さらに、安売りや出店競争の激化により、給料が良くない場合が多く、遅かれ早かれ「人件費カット」に踏み切ることになるのです。
これが、小売業界の「劣悪な労働環境」の正体です。
- ケガが絶えない(力仕事による腰痛や腱鞘炎など)
- 複雑な人間関係(正社員とパート間のあつれき)
- 休んだ気がしない(シフト制)
- 歳をとるごとにつらさが増す
- クレーム対応が不可避
- 年収が少ない
安売り競争をするためには、人件費を含めた徹底的なコストカットが必須になります。
私も店舗勤務時代、午前中の品出しだけで疲弊した苦い経験があります。
生活必需品を扱う店舗では、飲料やお酒のケースが信じられないほど重いのです。
そして、劣悪な労働環境は、人の心を蝕みます。
- 疲労感の蓄積
-
休みが少なく、残業が多いため、常に疲労感がつきまといます。
- 人間関係の悪化
-
精神的に追いつめられ、お互いへの敬意が欠けてしまいます。
- 自己肯定感の低下
-
ハードワークが続き、自分の限界を感じることが多くなります。
これは「あなただけのせい」ではありません。
業界の構造そのものが、あなたの心をすり減らしているのです。
Step 2:心をすり減らす「クレーム対応」から解放されるためのマインドセット
小売業界で働いていて、クレーム対応の経験がない人は、ほぼいないでしょう。
私の前職では、お客様相談室は60代の男性が1人という脆弱な体制でした。
その人が不在の時、総務職である私がクレーム対応をせざるを得ず、在職中に150件近くのクレームに対応しました。
クレーム対応の経験が積み重なるにつれ、ある共通点に気づきました。
クレーマーの本質は、「自己中心的で身勝手な人」ということに。(あくまでも個人的な意見です)
- 他責思考
-
「私は悪くない、すべて店舗側のせいだ」と主張します。
- 都合の良い解釈
-
自分の要求が受け入れられると根拠なく思い込みます。
- 間違った成功体験
-
声を荒げれば不当な要求でも通ると考え、何度も繰り返します。
- 時間よりも感情を優先
-
自分のイライラをぶつけることを優先し、二重に時間をロスしていることに気づきません。
これらの「自己中心的で身勝手な人」に、あなたは日々心をすり減らされているのです。
「正当な要求なら、それはクレームではないだろ⁉︎」
「主張すべきことを言って何が悪い‼︎」
といった反論があるかもしれません。
不満があっても黙れと言いたいのではなく、時間を大切にしてほしいのです。
例えば、200円余分にレジ打ちをされたとしましょう。
わずかな金額ですが、積み重なると大きな金額になりますので、バカにはできません。
しかし、人はミスをする生き物。
相手のミスに憤慨し、「200円今すぐ自宅まで持って来い‼︎」と電話する方が時間の無駄です。
不当な要求を受けた時、知っておけば心が軽くなる「2つの武器」があります。
武器1:不当な要求は「キッパリ断る」勇気
クレームには、相手が声を荒げても、その要求が正当か不当かで判断しなければなりません。
不当な要求は、断固として拒否すべきです。
「知り合いの弁護士にいうぞ‼︎」と脅されるかもしれませんが、その時はこう返せばいいのです。
「それを止める立場にはございません…」
実は、弁護士が出てくれば、こちらも顧問弁護士に相談し、弁護士同士の話し合いになるので、むしろ好都合なのです。
武器2:いざという時は「警察を呼ぶ」という選択肢
ショッピングカートと車の接触事故など、店舗駐車場でのトラブルが頻発しています。
静止したショッピングカートに後進した車(お客様の運転)が接触する事故の場合は、迷わず警察を呼んでください。
警察官が運転手に厳重注意を与えてくれる可能性が高いからです。
民事不介入とはいえ、警察官なら、運転手の後方不注意を指摘するからです。
店舗従業員の面前で不注意を指摘されることで、トーンダウンが見込めます。
他にも、長時間居座るクレーマーには「不退去罪」、土下座などを強要された場合は「強要罪」 が適用される可能性があります。
こうした知識を持つだけで、あなたは理不尽な要求から身を守ることができるのです。
Step 3:自分の「本当の適性」を再発見し、キャリアの方向性を定める
あなたは本当に小売業界に向いているでしょうか。
そして、このまま働き続けることに後悔はないでしょうか。
人には向き不向きがあります。
小売業界に向く人は「人と接するのが好き」、「与えられた仕事を黙々とこなすのが好き」、「体を動かす仕事が好き」といった特徴があります。
一方で、以下に当てはまるなら、小売業界は向いていない可能性が高いです。
- 人の好き嫌いがハッキリしている
- 理不尽な要求に屈するのが嫌だ
- いずれは他の業界に転職したい
- 自由な発想を仕事に活かしたい
- 体力に自信がない
特に注意したいのが、キャリアアップについてです。
店舗勤務はルーチンワークが中心となるため、経験が長くなるほど他の業界でも通用するスキルが身につかず、転職が難しくなります。
人生100年時代、小売業界に一生を捧げる「リスク」
医学の進歩により平均寿命が延び、50年働くのが当たり前の時代が到来しつつあります。
たとえ、今あなたが小売業界に向いていると思っていても、50年も働けば、どこかで心変わりするはずです。
その時に他の業界に転職できないとなると、残りの何十年もの期間をイヤイヤ働き続けることになります。
「天職」は一生のうちに出会えるかどうかわからないものです。
それよりも、苦痛なく結果が出せる「適職」を探す方が現実的です。
Step 4:悔いのない「転職」に向けた、具体的なアクションを起こす
もし、あなたが「仕事がツライ…」と感じていて、転職を悩んでいるのなら、すぐにでも行動を起こすべきです。
「転職するなら今」だと断言できる理由は、早期の決断が賢明だからです。
転職年齢35歳限界説という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、若いほど「ポテンシャル(伸びシロ)」が見込まれ、長期にわたって雇用できるため有利なのです。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか。
小売業界から異業種への転職、成功へのロードマップ
20代であれば、一貫性のある志望動機があれば、比較的転職は可能です。
問題は30代以上です。
小売業界の経験がコアスキルになっているため、他の業界に転職するための準備期間が必要になります。
最も現実的なのは、希望する業界の仕事、もしくは親和性の高い仕事を始め、2〜3年の経験を積んでから、より良い条件の会社に転職することです。
無経験から他の業界に飛び込むわけですから、最初からホワイト企業に巡り合えるとは限りません。
しかし、そこで耐え忍び、スキルを身につけることができれば、理想の転職に近づくことができます。

Step 5:自分らしい「働き方」を選び、あなたの人生を切り開く
私は18年間、小売業界に身を置いてきましたが、17年間は総務職、店舗勤務はわずか1年間でした。
この1年間で転職を決意したからこそ、私は自由な時間を手に入れ、Kindle電子書籍出版に挑戦することができました。
もし、あのまま小売業界にいたら、間違いなく心身ともに疲弊し、電子書籍出版やブログ記事を書く余裕はなかったでしょう。
もちろん、価値観は人それぞれです。
仕事が苦痛でなければ、それで良いのです。
しかし、もしあなたが「小売業界に生涯を捧げたい」と考えるのなら、以下の高いハードルを乗り越えなければなりません。
- 円滑な人間関係を維持する話術と人間性
- 多少のことでは動じないタフな精神力
- ケガや疲労とは無縁の強靭な肉体
- クレーム対応を楽しむ余裕
- 小売業界への強い愛着心
これらすべてを乗り越えられるなら、迷う必要はありません。
小売業界での経験は、私にとって決して無駄ではありませんでした。
ここまで辛辣な言葉を並べてきましたが、実は楽しい思い出もたくさんありました。
私のサラリーマン人生で一番つらく、そして一番楽しかった時期でもあります。
しかし、私は「自分らしい働き方」を求め、新たな道を歩むことを選択しました。
あなたの人生は、あなたのものです。
この記事が、あなたの「悔いのない決断」を後押しし、より良い方向に進むことを心から願っています。
▼拙著「【警告】就職・転職するなら小売業界はやめとけ!!」▼
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